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公認心理師 現状と将来
産業領域
チームで組織と個人を支援する
産業領域での心理職の
働く立場とその役割
産業領域で心理職としての専門
スキルを活かした働き方は,二つ
の軸で整理できるのではないかと
考えています。一つ目が事業場内
と事業場外のいずれの立場で関わ
るか,二つ目が会社と連携をしな
がら個人と組織の問題解決のサ
ポートをする立場で関わるのか,
会社と連携しない安心感を重視と
する個人支援の立場で関わるの
か。産業領域に関わる心理職の働
き方は,このいずれの立場で関わ
るかによって,求められる役割と
実務で経験する内容は異なると思
います。
事業場外資源として個人と
組織の問題解決をサポートする
私は,社外の専門家として,個
人と組織の問題解決のサポートを
する立場で産業領域に関わってき
ました。ベンチャーから数万人の
規模の会社まで,産業領域での心
身の健康づくりを担う産業保健体
制は,会社ごとにかなり異なりま
す。また同じ会社であっても,本
社と支社などの産業保健体制のリ
ソースは大きく異なっているのが
現状です。そのような中で不足し
ている役割を補うために,会社の
中で人事労務担当者や産業保健ス
タッフ(産業医や保健師・看護師
等)や,現場の健康管理を担う管
理職のみなさんが,どのように動
いていくと連携がとりやすくなる
のか,対応が必要な事例などを通
して,体制を整えていくことも仕
事の一つです。そのためには,会
社に義務づけられている法令遵守
の観点で,何の対策を優先的に整
えていかなければいけないのかと
いった知識や会社の人事制度のよ
うな会社内の規則などの基本的な
考え方,さらにはここ数年で認知
度が高まってきている健康経営の
ような経営の視点から健康増進に
取り組む際の考え方など,組織の
心身の健康づくりに関するさまざ
まな視点を理解しているという
ベースが重要であると感じていま
す。
個人と組織に関わるということ
メンタルヘルス不調の従業員の
方の個別の支援においては,組織
の課題が大きい場合など,個人の
セルフケアだけでは対処が難しい
事例があり,個人と組織へアプ
ローチすることの重要性を感じま
す。さらに専門職間の連携におい
ても,本人の同意をとったうえ
で,社内の人事や産業保健スタッ
フや管理職,社外の主治医など,
さまざまなリソースが連携するこ
とで個人と組織へのアプローチの
対応の幅が広がることがありま
す。そして,これらの連携の際に
産業領域で重視される特徴的な視
点として,従業員が職場で安全で
健康に働いてもらうために,職場
で顕在化している状態像をとらえ
る「事例性」といわれる視点で整
理し,そのうえで(職場で対応可
能な範囲の)配慮を考えていくと
いう考え方があげられます。
公認心理師の活躍のために
今後,産業領域で働く公認心理
師の活躍の場についてのポテン
シャルは,私が経験してきたよう
な立場の支援にもありますし,そ
れだけでなく経営的な視点でも,
心身共に健康的な生活習慣を身に
つけ長期的に生産性高く働ける人
材を確保することが重要視される
なか,健康な(生活)習慣への行
動変容のサポートなどへの関心も
強まっていると感じます。このよ
うに,心理職が貢献できる領域は
広いと思いますが,産業領域の就
職の採用基準には産業領域の実務
経験が求められることが多く,最
初の実務経験を積める場所が少な
いことから仲間が増えにくい状況
にあります。そのような状況を少
しでも改善するために,今年から
私の所属する企業では1年間に渡
るインターンシップの受け入れを
開始して,実務経験に近い体験が
できるような取り組みを試行錯誤
で始めたところです。微力なが
ら,このような取り組みを重ねる
ことで少しでも産業領域で働く仲
間が増えることを願っています。
SOMPOヘルスサポート株式会社
田上明日香
(たのうえ あすか)
Profile─田上明日香
リクルートグループでの社会人経験を経て,2005年に早稲田大学大学院
人間科学研究科人間科学専攻修士課程に入学。2011年に同専攻博士後期
課程修了。同年より現職。2013年より早稲田大学で非常勤講師を兼任。
インターンシップの様子。
架空の具体的事例をテーマに心理
職としての対処を議論。